コーポレートサイトの問い合わせフォームに入力があると、メールがほぼ全社員に届く仕組みになっていた。本来の問い合わせであれば担当者が対応し、必要に応じて転送する。しかし近年、営業目的でフォームを使うケースが横行しており、届くたびに社員が中身を確認し、営業メールならゴミ箱へ、問い合わせなら担当者へ——その判断と処理を、200人の社員それぞれが繰り返していた。仕事は回っていた。問題とは、誰も呼んでいなかった。
「特に問題なく仕事は回っている」——それがこの状況を放置し続けた理由のすべてだった。誰も改善を提案せず、誰も工数として計上せず、気が利く社員が当たり前のように本来の業務の手を止めながらメールを確認し続けていた。問題として認識されていなかったこと自体が、唯一の阻害要因だった。あるマネージャーが「これは本当に仕事なのか」と疑問を持つまで、誰も立ち止まらなかった。