先日、ある企業の役員の方と情報交換をしていた際、
こんな「違和感」を打ち明けられました。

「最近、部下から上がってくる企画書や報告書が、
 妙に綺麗すぎるんだよね。でも、中身を読み込むと
 どこか薄っぺらくて、心に響くものがないんだ…」

この違和感の正体、おそらくご自身も
薄々感じていらっしゃるのではないでしょうか。

今、空前のAIブームです。
ボタン一つで、それらしい回答が返ってくる。
「業務の効率化」という名の下に、多くの社員がAIを活用し始めています。

しかし、現場で起きているのは「効率化」ではなく、
思考を止めた「丸投げのコピペ」です。

AIが出してくる答えは、いわば「全人類の平均点」です。
それをそのままコピペして仕事をした気になっている。
そこには、顧客の顔も、現場の痛みも、自社ならではの執念もありません。

私が最近、何よりも危惧しているのは、
この「コピペ文化」が、社員の能力向上を
完全に停滞させてしまうという事実です。

仕事の差別化要素は、正解のない問いに対して、
のたうち回りながら自分の頭で「最適解」を捻り出すプロセスにあります。

ご自身が今の地位を築き、多くの修羅場をくぐり抜けてこられたのは、
決して誰かの答えをコピペしたからではないはずです。

誰よりも深く考え、リスクを背負い、
自分の言葉で周囲を説得してきた…
その「思考の筋力」こそが、今のご自身を作っているのではないでしょうか。

今の社員たちがAIを「思考の代行者」にしてしまうことは、
将来のリーダー候補から、この「筋力」を奪っているのと同じです。

では、AIを使いこなしつつ、
彼らの能力を停滞させないために、私たちはどう向き合うべきか。

一つだけ、報告を受けた際におすすめの問いかけがあります。

「このアウトプットの『10%』は、君ならではの
 どんな仮説やこだわりが込められているかな?」

AIが作った90%の土台の上に、
自分にしか出せない10%の「魂」を乗せさせる。

この10%を問われ続けることで、社員は初めて
AIを「道具」として使いこなし、思考を止めない習慣を身につけます。

「道具」に使われる人間になるか、
「道具」を使って次元の違う成果を出す人間になるか。

その分岐点は、私たち経営層が
「君の考えはどこにあるのか?」と
問い続けられるかどうかに懸かっているのだと、今日、改めて感じました。

なにかお役に立てれば、幸いです。